寄贈基金の運用と代替運用の重要性
本書は、全米でも上位3位にはいる、イェール大学の基金の過去20年の運用の記録である。寄贈基金は、基金の目的である、大学運営の補助金を出すと同時に、インフレを上回る率で運用することが、使命であると述べている。この目的を達成するために、具体的にどのような、運用を行ってきたか。成功も失敗も詳細に記録しており、日本の年金基金、大学、財団等の寄贈基金の運用者および所管官庁の担当者の必読の書だと思う。他の著作は理論が多いが、本社の強みは過去20年の実際の運用記録であることだ。特に日本も参考にしなければならないと思われるのは、イェール大学のポートフォリオである。積極的にイクイティに90%の投資を行い、債券での運用は10%と非常に低い。もちろん、リスクをコントロールするため、株式を利用した、絶対リターンへの投資も25%を占めている。主要な特徴の第二はプライベート・イクイティへの投資であり、17.5%を占めている、その中でも(米国の)ベンチャーキャピタルへの運用が高い比率を占めていることだと思う。今後、日本の大学(国立私立を問わず)も本格的な競争が始まるが、大学の強みは、基金の厚さ、規模、によるとも書いている。寄贈基金の運用者の参考にもなると思われる。
資産運用担当者のガイド
エール大学基金の資産は約70億ドル。この資産規模は、日本の企業年金でもトップクラスに相当する。しかも20年間にわたり20%近い収益率あげてきた。エール大学に限らずアメリカの伝統的大学基金の特徴は、オルタナティブの比率がかなり高いことである。エール大学基金の素晴らしいパフォーマンスは、特別な戦略によってもらされたものではなく、マーケットの後追いをしない逆張り戦略を辛抱強く続けてきたことによって達成できたものである。資産運用担当者にとって極めて示唆に富む内容と言える。
金融財政事情研究会
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